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耳ざわりのいい目標を立てて「やります、やります、がんばります」と口先で言うだけなら子どもでもできます。
言行一致をどこまで徹底するか。約束がごまかされないために、PDCAのうちのチェック機能をいかに担保するか。
そのしくみの要諦は「第三者が客観的に検証可能な言動から得られる数値を指標化して記録に残して管理する」こと。
約束が守られるためのしくみ
※これは当社の「第17期 経営指針書」からの抜粋で、
わが社の重点課題のひとつ「しくみが整うしくみづくり」の一部です。
基本的には社内文書なのですが、他社さんでも役立てていただければ嬉しいので積極的に公開しています。
みんなの見えるところに出して数える
「これからは気をつけます」とか「がんばります」とか「心がけます」「意識を高めます」「徹底します」のような、気持ちをあらわす言葉は、結果をはっきり確かめる方法がありません。
せっかく当人が、気をつけて、がんばって、心がけて、意識を高めて、徹底しているつもりでも、それがほんとうかどうか、どの程度のものか、身近なところで見ていない人は確かめることができません。確かめられないものは、ごまかすことができてしまいます。ごまかして逃げる場所があれば、ついサボってしまうのが人間です。当人にとっても、実行する言ったことを実行したことを証明する方法がなければ、達成感が損なわれてしまいます。
こういった課題への取り組みとして、「みんなの見えるところに出して数えること」を、約束を守る習慣づくりの基本とします。
数えられないものは確かめにくい(=ごまかしやすい)ことを知る
目標を立てるときや、反省の意をあらわすときなど、何かを約束するときは、「数値化されない約束はごまかされやすい」ことを思い出し、できうるかぎり「第三者が客観的に検証可能な言動から得られる数値を挙げて文書化する」ことを実践してください。
心の中を目で見ることはできません。気合いや意志や情熱は、それが本気なのか、うわっつらだけの軽薄なものなのか、判別することは困難です。他人から見て真偽が判別できないことを約束すること自体、うそつきのはじまりと言われてもしかたがないということです。
そんな意味で、「あしたから禁煙します」は約束として成り立ちます。が、「あしたからダイエットします」はあいまいですから約束したうちに入りません。「一日二食にします」とか「牛と豚を断ちます」ならいいのです。
上司から部下に注意するときなどもこれと同じで、「気をつけろ」と言われても、言われたほうは何をどうしたらいいか、具体的にわかりません。具体的に何をどうしたら気をつけたことになるのか。結果としてそそっかしい性格が少しでもマシになるか、本人や第三者が検証可能な言動に置き換えてアドバイスをしてあげる必要があります。かみくだいて、かみくだいて、かみくだいて、その気になりさえすれば変えられる小さなアクションまでブレイクダウンすること。心を変えるにも行動からです。
心の成長まで数値化する手段
「おまえ、もっと素直になれよ」と上司がアドバイスする。「はい、わかりました。あしたから素直になります」と部下が答える。これで部下が素直になるくらいなら上司はなんの苦労もありません。なのに、こんな間の抜けた会話が毎日まいにちエンドレスにくりかえされる。「人が育つしくみ」のない会社の悲しさです。
「素直になる」ということを、「第三者が客観的に検証可能な言動」に置き換えるとどうなるか、それを考えてください。「上司に注意されたとき、いいわけしない」とか「自分の意見とちがう発言でも最後まで聞く」とか、いくつもあるはずです。このように、第三者が客観的に検証可能な言動に置き換えることができれば、それは記録して数えることができます。
「もっと専門知識を身につけなきゃだめだ」という言い方では意味が伝わりません。「おすすめの専門書を教えてやるから月に1冊のペースで読んで、その感想を400字にまとめて月末に持ってこい」ならいいのです。
みんなの見えるところに入れる
「みんなの見えるところに出して数える」ために、みんなの見えるところに入れます。「みんなの見えるところ」とは当社の場合、「エムウェブ9」の中にある「ポジ出し日報システム」です。
「ポジ出し日報システム」の主な役割のひとつは、事象を記録して数えることです。誰かのいいところが見つかれば、「いいね!」と言葉で発表するだけではなく、システムに文書として記録します。「注意」や「指導」「ミス」といった「ダメ出し」も記録しますが、これは否定して人格を傷つけることが目的ではありません。「みんなの見えるところに出して数える」ためです。
「上司に注意されたとき、いいわけしない」と約束した人がいいわけをすると、また注意されます。注意されてもまたいいわけしてしまうでしょうが、それでも上司は根気よく指導し、注意します。それがシステムに記録され、数えられます。先月注意された数が5回で今月の注意が2回なら、ずっと注意されっぱなしのようでもその部下は成長していることがわかります。「注意が減った」ことをほめてやることができます。「ポジ出し日報システム」が「ダメ出し」も記録するのは、否定のための否定ではありません。事実を事実として歪みなく把握することによって、そこから成長を見つけるためです。
入れ方の注意
「ポジ出し日報システム」は、入れたら数えてくれるようにできています。情報を一定のルールにしたがって「雲」に放りこむだけで、あとはシステムがカウントして点数化した指標を全社で共有できるしくみになっているのです。ですから、日々のミーティングで報告を出しあうことが決定的に重要です。「ある日の小さなミスは記録したが、別の日の大きなミスの記録が漏れた」というようなことでは、正しい集計結果が得られません。「これを出すと気まずくなるから今日はやめておこう」というような感情的なムラを起こすことがあっては正しい処理ができません。PDCAの「C」、チェック(検証)にあたっては、厳正なジャッジこそが求められます。そこは冷徹なくらいがちょうどよいのです。特に、部下が上司の言動を評価する場合に、ブレが生じがちです。「ダメ出し」は否定するためのものではないということをよく理解する必要があります。
記録は財産
正確な記録は財産です。「ポジ出し」はもちろん「ダメ出し」もです。たとえネガティブな発言の記録であっても、正しく使えば成長を測るモノサシになります。情報処理のプロであるわたしたちにとって、データベースは学びの宝庫です。「見えないものを見える化する技術」があるからです。
何年何月、誰が、何回、どのレベルで、ほめられたか、または、叱られたか──。単純に言えば、たったそれだけの集計結果でも、人間的な成長を客観的に示すこことができます。見えない階段は上れなくても、見える階段ならだいじょうぶ。これがわたしたちのプラチナデータです。
「ポジ出し日報システム」の「客観的に検証可能な言動を記録してカウントする」機能を賢く根気よく活用すれば、約束が守られるためのしくみができあがります。本人が気づかない事実を、まわりが気づかせてあげるしくみです。感情的になってぎゃあぎゃあ責め立てても人を変えることはできません。自分との約束を守っていただくか、それができないなら辞めていただくか、ふたつにひとつです。